こんにちは、数年前に山小屋で働いていた経験があるaimi(@shikokunoyama)です。
秋も終わり、冬に向かおうとしている日本アルプス。
標高1,000m台まで紅葉前線がやってきていました。
2019年秋・阿曽原温泉小屋のHPでは異例の呼びかけ
北アルプス「下ノ廊下」で立て続けに5名死亡
2019年10月下旬。北アルプス黒部にある「下ノ廊下」で滑落事故が多発。
1ヶ月の間だけで5名がなくなりました。
記憶にある限り過去最悪のペースではないか?
スタートorゴールである阿曽原温泉小屋のHPでは異例の呼びかけが。
昨日も、黒部別山谷出合付近で転落死亡事故が発生してしまいました。
去年もたて続けに2件の発生がありましたが、今年ほど死亡事故が多発する年は記憶にありません。
それぞれ発生理由はありますが、入山前にはもう一度断崖が続く危険で長いルートに入ると言う事を頭に叩き込んでから歩きに来て頂けたらと思います。
遭難には至ってはいませんが、昨晩も黒部ダムから来た登山者が
「ものすごく遅くて、足取りのおぼつか無い女性が向かっている」(早朝4時頃には黒部ダムを出ているはず)
「小学校の林間学校に使う様なリュックサック(横長のやつ)で、遅い女性が向かっている」
と口々に言われて・・・。
暗くなっても小屋に届かないので、詰めている山岳警備隊員が探しに向ったところ疲労困憊でほとんど動けなくなっている女性と合流。
サポートされながら20時半過ぎに小屋に到着、目は虚ろで真直ぐ立つ事すら出来ず、穿いていたジャージトレパンはズリ下がり、食堂に入った途端にへたり込んで・・・。
昨晩は22時頃から冷たい雨が本降りに、もしも警備隊員に見つけてもらえていなかったら、今朝までに低体温症~疲労凍死に至っていたであろうと思われます。(実は二週間ほど前にも、同様な短パン生脚の女性単独登山者が来られて・・・)
強い呼びかけは「愛」?こんなに言ってくれる山小屋は他にありません
ここまで厳しくおっしゃってくれているのには「愛」「義務感」を感じざるを得ませんが、普通に考えてもここまで大きな声を上げている小屋は見たことがありません。
「下ノ廊下」のネットや写真で見られる美しい風景を期待してこられるのはわかりますが、気軽には見られない。
それをわからない人が多すぎるんですね。
自分が「いいね」しなくても他人が「いいね」をつけた写真はいやがおうなしに流れてきます。
しかし、
・一般的に言われている「登山グレーディング」
は全く異なるんですね。
【登りたい山=登れる山ではない】「登山グレーディング」と自分の体力の一致度を確かめるには?
①難関コース=「グレーディングの体力ギリギリ」では絶対に挑まないこと
「登りたい山=登れる山ではない」。
これを理解するには、「体力ギリギリで挑まない」ということが重要になってくるのです。
つまりある程度「どんとこい」レベルまでいってないと、行くべきではないということ。これが理解できない人が多いんです。
今回「下ノ廊下」でお亡くなりになった方はほとんどが高齢の方々。
これは偶然ではありませんよ。
「若い時の体力を過信」してしまったのかはたまた、来れる脚力がなかったのか。
…本人は落ち度がないと思っているわけですから、救助隊や山小屋さんが厳重注意していくしかできることがありませんね。
でも山小屋は、こんなことを伝える義務・責任はありません。
でも言ってくれている。これは相当危機感を持たなくてはいけないこと。
我々登山者はそれを自覚しなければいけない。
これはただ事じゃない、
今年は「異常」なんだということを理解しないとダメ。
“黒部峡谷・下ノ廊下では今月に入り5人が死亡したほか、ことしの遭難事故件数は、22日までに142件と統計開始以来最多” 秋山シーズン いっそうの注意を|NNNニュース https://t.co/HUS63IeMA1
— Kazuhito Kidachi (@kazuhito) October 25, 2019
【山の #遭難】#北アルプス #黒部川 #下ノ廊下 5人死亡
10月
10日 72歳女性
16日 70歳男性
20日 50代男性2人
21日 60代女性#地縛霊 の #霊障 の可能性もあるのでお祓いが必要かも・・・。https://t.co/KwsXHJVsQ7— 迷山 漫幽 (@meizanmanyuu) October 27, 2019
②類似グレードのコースを歩いてみて、どうだったか?反省会もしっかり行う
下ノ廊下は、8〜9時間歩き続けられる体力・精神力が必要です。
類似グレードだとどんなコースがあるかみてみましょう。
「関西の下ノ廊下」と言われる大杉谷で類似体験するのもありでしょう。非常に道が似ています。高度・歩行時間こそ違いますが。
高度感に慣れるのはとても重要です。
私は高所恐怖症です、今の時点では「下ノ廊下」を歩ける気がしません。
ですが「大杉谷」は歩けました。
大杉谷の高さ×3倍くらい…
などは歩きながら想像はできるはず。
こういうことなんです。
そして、同行者と反省点を話し合うのも大事。
ソロの場合は、気になったことを書き留めておく。
そして引っかかることがあればネットで調べてみる・山の先生に聞いてみる。
反省会。これはとっても大事なので怠ってはいけませんよ!
「グレーディングマップ」の体力をクリアしていても事故は起こる。なぜなのか
それでもやっぱり事故は起こる。
その理由は、以下を理解しなければなりませんよ。
いくら全てが万全でも天候・外的要因の怪我リスクは「ゼロ」にはならない
登山にはいくら体調万全・体力OKでも勝てないものがあります。
- 天候
- 運
- 他者から怪我をさせられる
絶対に何もない、ということは言い切れないわけです。
外的要因は容赦なく襲いかかってきます。
自然の中では人間は無力…。
いくら、「注意していて歩いていても」事故は起こるときは起こるのです。
危険ルート、リスクを最小限にするには?
冒頭で述べた「グレーディング以上の体力を持つ」のほかにも、リスク回避できる方法はまだあります。
できることは全てやりましょう。
以下はほんの一例。
コース・人により異なるので全ては書きません。
自分で知恵を絞って、当日をシミュレーション出来るようにお願いします…
・ヘルメットをかぶる(噴火・滑落時に頭を打つリスクを最小限に)
・小屋で睡眠が十分取れるよう、なるべく空いている時に行く(混雑小屋での寝不足は、事故の元!)
・早出・早着
・前泊をして、体力を温存
・1週間前に当日と同じ装備を担いで山に行ってみる
【ちなみに】私が北アルプス最難関「剱岳(つるぎだけ)」に登った時の準備を振り返ってみた
ここからは個人的に話になってしまうのですが、私は「下ノ廊下」を踏破したことはなくこれまで書いてきたことはぶっちゃけ想像に過ぎません。
こんなことを書くと申し訳なく思うので…
5年前の北アルプス一般ルート・最難関「剱岳」に登った際の準備を書いてみたいと思います。
②腕力を鍛えるため、自宅に懸垂器具を導入
③甲斐駒ヶ岳の黒戸尾根を1泊で踏破、長い尾根歩き・岩場になれる
④その年は剱岳の前に「3回」北アルプスに通った(普段は行けて2回だった)
お金と時間をかけて挑んだ剱岳。
今振り返ってみても特別な体験だったと思いますし、忘れられない山になりました。
もう一度登りたいとすら思います。
事前準備も楽しみながらやれば、辛くはありません。
早めにはじめて、「余裕を持った体力作り」をしていきましょうね。
ちなみに懸垂器具は、デスクワークの肩こりにも効果てきめん。日常使いしてますw
まとめ:山のトレーニングは山でしかできません。事前準備がとても大切
ここで一度まとめましょう。
①難関コース=「グレーディングの体力ギリギリ」では絶対に挑まないこと
②類似グレードのコースを歩いてみて、どうだったか?反省会もしっかり行う
→いくら全てが万全でも天候・外的要因の怪我リスクは「ゼロ」にはならない
・荷物を極力軽くする(テント泊なんてもってのほか、小屋が営業しているうちに行きましょう)
・ヘルメットをかぶる(噴火・滑落時に頭を打つリスクを最小限に)
・小屋で睡眠が十分取れるよう、なるべく空いている時に行く(混雑小屋での寝不足は、事故の元!)
・早出・早着
・前泊をして、体力を温存
・1週間前に当日と同じ装備を担いで山に行ってみる
身の程知らずな登山者にはなりたくないですからね!
警察や、山小屋に迷惑かけないで山を楽しみたいものです。
ちょっと強い口調になってしまったところもございましたが、山に行くのには事前準備が全てと言っても過言ではありません。
難関ルートに行かれる際は、当記事を参考にしていただけたら幸いです。
以上「【登りたい山=登れる山ではない】「登山グレーディング」と自分の体力の一致度を確かめる方法とは?」の記事をお送りしました。
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