こんにちは。
山小屋で働いたこともある、アウトドアライターのaimiです。
先日、福島県の安達太良山で夫婦が遭難するという痛ましい事故が起きました。
【福島県・安達太良山】「くろがね小屋」まであと1時間というところで夫婦が遭難
10月の冷たい雨、17時に山頂、小屋に着くころには真っ暗になることが予想された
2019年10月26日午前8時20分頃、福島県郡山市熱海町石筵(いしむしろ)の安達太良山(標高1700メートル)山頂に近い登山道で、男女2人があおむけで倒れているのを登山者が見つけ、110番した。登山中に遭難したとみられ、搬送途中に死亡が確認された。る死因は低体温症だった。
郡山北署の発表によると、2人は埼玉県新座市の無職男性(70)と妻(69)。25日昼頃、福島市の野地温泉側の登山口から登り始め、山頂近くの山小屋に宿泊予定だった。しかし、同日午後5時頃、夫妻から山小屋に「今日は行けません」と電話があり、その際、救助要請などはなかったという。
当時は雨が降り、気温も下がっていたとみられるが、2人はテントなどの宿泊装備は持っていなかった。雨にぬれて体温が下がり、動けなくなったとみられる。
〜Yahoo!ニュースより引用
これには不可解なことが多く、SNSでもかなり拡散されていました。
2人は登山熟練者との見方が強いこともあってか、
ライトはなかったのか?
どちらかにイレギュラーなことが起き、付き添ってたのか?
さまざまな憶測が飛び交いました。
登山する身からすると、安達太良山はそんなに険しい山という印象はない。
でも、登山ルートから外れたり、日没まで下山できなかったのなら話は別。この時期に防寒の装備なしに夜を越すのは危険すぎる。
なぜ山小屋に助けを求めなかったんだろう。
遭難した原因を突き止めてほしい。
安達太良山は全ルートを歩いたし、年に5回ぐらい登るが、全く不可解な遭難。
野地温泉からということは縦走登山であり、ある程度経験と体力を積んだ登山者であるはず。
途中、箕輪山でエスケープルートを選択するか、鉄山避難小屋に逃げ込む選択肢もあったはず。
山頂付近で発見とあるが、実際どこだったのかもう少し詳しく知りたいとこだ。
沼ノ平の前にたてばあそこは今地期風速20mごえになるのもしばしばなので、雨が降ってたら低体温症もうなずける。
霧が出てて道を見失っていたのだろうか?
それにしてもいくらでも下山ルートを選択できるはずなので、体力不足だったのだろうか?
夫婦同時ということだし、どっちかにトラブルが起きたのか…。せつないな。
ヤマレコにも掲載されている「野地温泉〜縦走コース」だったなら、くろがね小屋まであと1時間だったはず。※しかも下り
でも17時に山頂にいたということでは明るいうちの到着は厳しい。
しかも冷たい雨が降っていたというなら、ビバーク以外選択肢なはなさそう…。
【状況把握】野地温泉から箕輪山、鉄山、安達太良山コースの詳細
おそらくご夫婦は以下のルートでくろがね小屋を目指していました。
【日帰り】野地温泉から箕輪山、鉄山、安達太良山へ
■総コースタイム 6時間40分、標高差548m(+931m、-1167m)
野地温泉(08:00)・・・土湯峠(08:20)・・・鬼面山(09:10)・・・箕輪山(10:30)・・・鉄山避難小屋(11:20)・・・鉄山(11:35)・・・牛ノ背(12:00)・・・安達太良山(12:15)・・・牛ノ背(12:30)・・・峰ノ辻(12:45)・・・くろがね小屋(13:15)・・・勢至平(13:40)・・・奥岳(14:40)
くろがね小屋で1泊すれば、健脚者ならかなり余裕のコース。
コースタイムは3時間15分です。
日帰りコースとして紹介されてるくらいだからね!
なぜそんなに遅れてしまったのか?
出発が遅かったのではないかと指摘されています。
10月下旬の日はとても短いです。
安達太良山の10月28日・日没時刻は16時46分。
電話をかけたのは、日没後ということになりますね。
でも真っ暗ということはなく薄暗い程度だろう…
しかしこの日の天候は雨。
真っ暗に近かったと想像できます。
私もこのルートを歩いた経験がありますが、山頂から小屋までは危険箇所がなかった印象でした。
明るければ1時間かからないです。
しかし岩の山なので、基本的には夜間の行動は避けたほうがいい。
ご夫婦の致命的だった2点
致命的だったのは以下の2点。
②「宿泊装備を持っていなかった」
…これにつきます。
私自身天候にはやきもきさせられることも多く、思い切って登ることもありますが、台風の影響がある日は極力中止します。
雨だけならまだしも、山でいちばん怖いのは「風」だから。
「トムラウシ山の遭難事件」をご存知の方なら判断を誤らなかったはず。
夏でも低体温で死ぬことがあるんですよ!
ご夫婦は低体温になっていたのに「山小屋」に今の状況を伝えることはできなかったのだろうか?
以下はお亡くなりになったご夫婦と同年代の方のコメント。
夕方の5時位に電話してきたのなら、その時間に山小屋に救助要請しても捜索隊を出すのも困難だし、迷惑がかかると思ったじゃないかな。ただ宿泊の予約を入れていたので、連絡を入れないのも食事などの用意で小屋に迷惑がかかる、と。他人への配慮を優先してしまう年寄りにありがちな考えです。
山登りする兄弟からたまにきくけど。
それなりの年齢で山登りをする人ほど、救助要請のタイミングが難しいと言ってた。迷った、やばいなーとまだ余裕があるうちは連絡しにくく、本当に連絡しなきゃと思ったときは切羽詰まってて頭がうまく回らないそう。
世間では山登りなんてのは自己責任だと言われるし、山岳救助の大変さを知ると今自分が「どこまで危険な状況であるのか」どこまでが「安易な救助要請」なのか判断出来ない。でも一番必要なのは、体に何か違和感を感じたりしたら即、山登りを中止する決断だとのことです。
おそらくそう。こうなることは2人はわかっていた。
17時に電話するのではなく、もう少し早めに連絡すべきでしたね。
とはいえ、「今日は泊まらない・宿泊装備を持っていない」ってなんか矛盾していません?
今の状況を、小屋の方に正直に伝えるべきでした。
そうすれば何かしらの指示を仰げただろうし、遭難者の捜索=小屋の仕事ではないけど警察・消防に連絡を繋げてくれたかもしれません。
ここばかりは遠慮するところじゃありませんでした。
【緊急時に限って】山小屋に遠慮はいらない、事実を伝えよう
私が山小屋で働いていた時も、同様のことがあったので強くそう思います。
やはり秋深まる10月のこと。
夕方になって「小屋に着くのが日没になる・ビバークする」と電話してきたご夫婦がいました。
聞けば、登山を始めて間もないと言った感じで事務所(事務所は小屋にはなく、下界でした)に連絡してきたので電話を受けたスタッフがアドバイスしたのだそう。
小屋側でも、夕方は確かに忙しい時間帯ではありますが話を聞くことくらいはできます。
慌てて「今日は泊まりません」というだけでなく、
- 今もう山に入っていること
- ビバーク装備を持っていないこと
- 風が強く吹き、寒く、視界も悪い。どうすればいいかわからない
今回の場合もありのままの事実を伝えるべきでしたでしょう。
「泊まりません」では”入山していない”ものだと思うスタッフがほとんどだと思いますよ。
判断力がすでに鈍っていたからもしれませんので、憶測ですが…
低体温症とは、そういう症状も特徴のひとつです。
まとめ
ここで一度まとめましょう。
これは熟練者も初心者も同じです。
登山は基本的に自己責任です。
一部のマナーの悪い人のために、本来救助を必要としている人に救助隊が行き渡らないとしたら、それは大問題です。
- あなたの装備、大丈夫?
- 天候は悪化傾向?やめなくて大丈夫?
- 出発時間は遅すぎてない?
十分なくらいに準備をして、楽しく山登りをしましょうね!!
”「山小屋に遠慮しすぎ」「頼りすぎ」は問題なの?ちょっと考えてみた”の記事をお送りしました。
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山岳保険は登山者の義務です。
特に単独で登られている方は、入るべき。
また、たまにしか登らない方向け「1日だけ保険」のご紹介もしていますので、参考にしてみて下さい♪